大腸ポリープとは、大腸の内側(粘膜)にできる小さな隆起(できもの)のことです。
多くは良性(がんではない)ですが、なかには時間をかけてがんになる可能性のあるもの(前がん病変)も含まれます。
特に「腺腫(せんしゅ)」というタイプや「鋸歯状(きょしじょう)ポリープ(SSA/Pなど)」は、大腸がんに進展することがあるため、注意が必要です。
大腸ポリープの原因や背景にある要因
大腸ポリープの発生には、さまざまな要因が関係しています。
- 加齢(年齢を重ねるとできやすくなります)
- 脂肪の多い食生活や食物繊維の不足
- 運動不足・肥満・喫煙・過度の飲酒
- 家族に大腸ポリープや大腸がんの人がいる(遺伝的要因)
また、腺腫(せんしゅ)性ポリープは前がん病変であり、「腺腫→がん」へと進行する「adenoma-carcinoma sequence(腺腫-がん連鎖)」が大腸がんの主な発生ルートとされています。
大腸ポリープの症状
ほとんどの大腸ポリープは無症状で、健康診断や便潜血検査をきっかけに、内視鏡検査で偶然見つかることが多いです。
ただし、ポリープが大きくなると、
- 出血(血便)
- 下痢や便秘
- 腹部の違和感やお腹が張る感じ
などを訴える人もいます。
特に10mm以上のポリープはがん化のリスクが高くなるとされており、早期発見が重要です。
放っておくとどうなるか
ポリープの種類によりますが、腺腫性ポリープの一部はがんに進行することがあります。
特に、大きさが10mm以上のものや、鋸歯状ポリープ(SSA/P)はがん化しやすい傾向があります。
また、知らないうちに出血を繰り返し、貧血になることもあります。症状が出ないまま進行するため、「放っておくとがんになる可能性がある病変」として、注意が必要です。
検査方法について
便潜血検査(FOBT):目に見えない血液の混入を調べます。
ポリープやがんがあると陽性になることがあります。
大腸内視鏡検査(TCS):肛門からスコープを挿入し、大腸全体を観察します。ポリープが見つかれば、その場で切除することも可能です(ポリペクトミー)。
ガイドラインでは、便潜血検査が陽性であれば、内視鏡検査で精査を行うことが強く推奨されています。
当院では、内視鏡システムとしてオリンパス社製の最上位モデル「EVIS X1」を導入しています。
高精細な画像に加え、特殊光観察機能であるNBI(狭帯域光観察)や、視認性の向上をサポートするTXI(構造色・色彩強調)といった先進的な観察モードを活用することで、より詳細に大腸内の粘膜を観察できるようになりました。これにより、大腸ポリープなどの前がん病変を、これまで以上に高い精度でとらえることが可能となっています。
また、これまでの検査がつらかった方や、内視鏡に不安がある方には、鎮静剤を使ってウトウトした状態で、ほとんど眠っているような感覚で検査を受けていただくことができます。
ご希望の方は、どうぞお気軽にご相談ください。
治療と日常生活でのアドバイス
治療
大腸ポリープは、内視鏡検査中に発見された場合、そのまま切除できることが多く、入院せずに日帰りで治療が可能です。ただし、ポリープの大きさや場所によっては、日帰りでの治療ができない場合もあります。
切除したポリープは、詳しく検査を行い、がんの可能性がないかを確認します。
早めに見つけて取り除くことで、大腸がんを未然に防ぐことができるため、定期的な検査がとても大切です。
日常生活でのアドバイス
大腸ポリープができないようにするためには、
- 食生活の見直し(野菜や食物繊維を増やす、脂肪を控える)
- 適度な運動を習慣化すること
- 禁煙・節酒を心がけること
そして何よりも、定期的な内視鏡検査によるフォローアップが大切です。
ポリープを切除したあとも、再発や新たなポリープができる可能性があるため、数年ごとの定期的な検査(サーベイランス)が重要です。