肺炎を引き起こす原因にはさまざまな細菌やウイルスがありますが、その中でも肺炎球菌という細菌は、成人の肺炎の原因の25~40%を占めるとされており、特に高齢者では重症化しやすいことが知られています。
肺炎球菌は健康な人の鼻や喉にも存在することがありますが、通常は何も問題を起こしません。しかし、体力が低下しているときや、インフルエンザなどで気道の粘膜が傷ついたときに増殖し、肺炎を発症することがあります。
高齢になると免疫機能が低下し、肺炎球菌が肺に侵入しやすくなるため、肺炎を発症するリスクが高くなります。さらに、糖尿病や心臓病などの持病をお持ちの方も、免疫力が低下していることが多く、注意が必要です。
予防が大切です
肺炎球菌による感染症には抗菌薬による治療が行われますが、最も大切なのは予防することです。肺炎球菌ワクチンを接種することで、感染そのものを防ぐ効果に加え、重症化のリスクを軽減することが期待されます。そのため、日本感染症学会や厚生労働省もワクチンの接種を推奨しています。
また、肺炎球菌ワクチンの接種によって、認知症の発症リスクが約23%低下したとする報告もあります。
肺炎球菌ワクチンの定期接種制度が変わりました
令和6年度(2024年4月~)から、高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種制度が変更されました。 これまでは、65歳以降も5年ごとに70歳、75歳…と定期接種の機会が設けられていましたが、制度改正により、定期接種の対象は「65歳の方(66歳の誕生日の前日まで)」に限定されました。
また、60歳以上65歳未満で日常生活に著しい支障をきたす程度の基礎疾患を有する方も、これまでと同様に定期接種の対象となります。
2014年10月から2024年3月までの10年間は経過措置として、65歳・70歳・75歳・80歳・85歳・90歳・95歳・100歳となる方も対象でしたが、今後はこの機会を逃してしまった方には定期接種の枠がありません。では、そのような方はどうすれば良いのでしょうか?
肺炎球菌ワクチンについて
肺炎球菌には90種類ほどの型(血清型)があり、成人の感染に関わる代表的な型に対応するワクチンがいくつかあります。
ニューモバックスNP(23価肺炎球菌ワクチン)
23種類に対応し、広いカバー力がありますが、効果の持続期間が短めです。
プレベナー13(13価肺炎球菌結合型ワクチン)
小児に多い型に対応。これまで任意接種で使用されていました。
プレベナー20(20価肺炎球菌結合型ワクチン)
プレベナー13が対応していた13種類に加え、抗菌薬に対する耐性や重症化リスクの高い7種類の型を追加。
日本で多くみられる血清型を幅広くカバーし、長期的な予防効果が期待されています。 プレベナー20を接種した場合、ニューモバックスNPを後から追加接種する必要性は基本的にないと考えられています。
プレベナー20(20価結合型肺炎球菌ワクチン)の登場
2024年8月28日、新しい肺炎球菌ワクチン「プレベナー20」が薬事承認されました。これを受けて、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会の合同委員会により、「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第6報)」が公表されました。
☆合同委員会の推奨から接種のパターンがあります。
以下「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(第6報)」で示されている接種例の一部です。
ニューモバックスNP | プレベナー20 | |
---|---|---|
特徴 | カバーできる範囲が広い 肺炎球菌の23種類をカバー |
免疫誘導能力が高い 肺炎球菌の20種類をカバー 保菌そのものを抑える |
接種間隔 | 5年ごとに接種可能 (免疫記憶持続期間が短い) |
1回でよい (免疫記憶効果あり) |
費用 | 定期接種(公費助成あり) 逗子市・葉山町補助 3,000円 任意接種(公費助成なし) |
任意接種(公費助成なし) |
プレベナー20を任意接種した場合、以後の追加接種は原則不要です。 ニューモバックスNPは約5年ごとに追加接種が望ましいとされていますが、プレベナー20は1回での長期にわたる効果持続が見込まれます。
ご相談ください
このように、肺炎球菌ワクチンの制度や選択肢は変化しています。どのワクチンを、いつ接種するのが良いかは個人の健康状態や接種歴によって異なります。
ご自身に合った接種プランについて、お気軽に当院へご相談ください。 その際は過去に接種した記録があればお持ちいただけたら大変助かります。
また、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス・プレベナー20)は事前予約して頂き、取り寄せて接種しています。 来院のうえご予約をお願いいたします。